期間 | 2008年9月7-8日 |
地域 | 上越・万太郎本谷 |
メンバー | L廣光OB SL倉本OB 保延 若林恵 |
9/7(日) 曇のち晴れ 08:50土樽駅-09:40万太郎本谷入渓点-10:40関越トンネル換気口横-11:40オオグリ沢出合-12:40一ノ滝下-14:10一ノ滝上-15:10イシクラ沢出合周辺BP |
8:38土樽駅集合。計画書をポストに提出して、入渓地点へと向かう。30分ほど車道を歩くと万太郎本谷の河原へ降りるポイントが現れる。左岸の車道を最後まで進めばさらに奥まで行けたが、我々は少し手前の河原から入渓することとする。 9:40行動開始。ゴーロを歩いて行くと遠くから怪しげな音が響いてくる、林道終点の堰堤に出たところで、キャンプ中の集団に遭遇。ロックフェスでもないのに、大音量でBGMを垂れ流しているのは如何なものか。巨大な堰堤の中を潜れば、いよいよ本格的な遡行が始まる。入渓後はしばらく穏やかな河原を進み、しだいに釜を持ったナメ滝や、綺麗なナメ床が現れる。晴れて陽光が差し込んでいれば、エメラルドグリーンに輝く美しい釜が楽しめたのだろうが、今回は雨の降りそうな曇り空の元の遡行となり、やや勿体無い感は否めない。 10:40関越トンネルの換気口で一本。ここまで結構なハイペースで来ているが、新人二人はしっかり付いてきており中々頼もしい。この先はオキドウキョ沢が合流するポイントでオキドウキョのトロと呼ばれる泳ぎポイントが現れるが、特に問題なく通過。湯檜曽川本谷のウナギ淵の様な感じを想像していたので、やや拍子抜けである。最後の滝は越えられないので、左岸バンドから少し戻るようにして高巻く。井戸小屋沢を越えると、少々手強い小滝が続き、時折お助けロープを出すようなエキサイティングな遡行が続く。今年の上越は残雪が多く、特にオオグリ沢の直前の辺りは八月まで残雪が残っているということだったので警戒していたが、九月初旬ということで、さすがに残雪は無かった。このポイントの小滝はややゴルジュ的な感じになっており、普通に登るだけでも残置ロープを使った緊張気味の登りとなるので、中途半端に頭上に雪渓が残ったりしていたらかなりヤバいに違いない。 11:40オオグリ沢出合付近で一本。振り返れば、それでも融け切れていない残雪の塊が依然残っているのが見える。上越はあと一ヶ月すれば雪が降るので、下手したら一年中融けないままかもしれない。 |
堰堤から入渓 | 楽しい遡行が始まる |
沢は徐々にナメ床へ | 汚い露天風呂に入らされる新人 |
小滝はガンガン登る | 目立つ換気口の横を通過 |
オキドウキョのトロを泳ぐ保延 | おそらく、8月まで雪渓が残っていた場所 |
ここからはやや小雨が降り出し、岩が濡れているということもあり、一ノ滝まで緊張するナメ滝の登りが続く。デトの滝沢付近では一部左岸を巻いて大きく右折し、少し進むといよいよ20mの一ノ滝が現れる。 12:40一ノ滝沢前で一本を取り、様子を伺う。直登は水流右側ということらしいが、小雨の降る中、濡れた岩での登攀は正直遠慮したい。巻きは右側のリッジ気味の部分を登って、滝右のハング部分の上を越えるルートのようである。一応安全のためにザイルを出すことにする。最初のリッジ部分は取り付きが不味かったのか、一部やや厳しい部分がある。そこさえ越えれば踏み跡のある容易な巻きとなり、ザイル二ピッチで最後まで巻く。巻きとしてはそこまで厳しくもないが、途中で雨が強くなり、明らかに増水している沢と、濡れによる寒さで新人はやや辛そうだ。なんだかんだでこの一ノ滝を高巻くのに一時間半も費やしてしまった。 14:10ここからは、ゴーロ状の渓相の中を進む。雨が止まないならこの辺でビバークも考えたが、なんとか止んだのでそのまま進む。やがて現れる10m二ノ滝は、ホールドの多い右壁を簡単に登ることができる。 15:10イシクラ沢を少し過ぎた部分のビバークポイントで、今日の行動は終了。整地されたサイトにツェルトをタープ状に張る。早速、焚き火の為の薪を集めるが、どれも濡れていてパッとしない、恵一朗は岩魚を狙って釣竿を持って来て居たようだが、残念ながら魚止めはすでに通過してしまっている。夕食後、倉本コーチに濡れた薪を使った焚き火の方法を教えてもらいながらまったり過ごすが、小雨が降って来たのでツェルトに戻り早々と就寝。 |
一ノ滝(20m) 右側から高巻く | 二ノ滝(10m) こちらは右壁を登れる |
イシクラ沢周辺のBP | 形だけの釣りを楽しむ恵一朗 |
9/8(月) 雨のち晴れ 06:45BP-09:40ノゾキ沢出合-11:30肩ノ小屋-12:00トマの耳-13:05天神平 |
5:00起床。魚肉ソーセージ入りのシチューに皆ハマる。昔からあれほど魚肉ソーセージは味が染みないから、ルーものに入れるなと言ってきたはずなのだが…。 6:45サイト発。高気圧が近づいてきているので晴れを期待していたが、天気は相変わらず小雨。どうやら一時的に西高東低の形になり、天気の回復はまだまだ遅そうだ。行動後すぐに、ついに万太郎本谷の核心部、2段30m三ノ滝が出現。小雨の中、水流やや多めの滝登攀は、かなり厳しそうだ。 まず、下段の垂壁は自分がリードで登る。ホールドは多いが、濡れていて怖いので、残置に加え二本ほどハーケンを打ち足しておいた。滝中部は広いテラス状になっており、ここから右側のブッシュ帯へと進んで支点を取る。三ノ滝上段は水流左・右のどちらも登れるらしいが、本日の水量と岩の濡れ具合を考えればあり得ない。選択肢は間違いなく巻きなのだが、無駄にブッシュ帯へ進んできてしまったこともあり、トラバースのラインを考えてしまったのが失敗だった。残置シュリンゲも見えたので何度かトラバースで巻きルートへの合流に挑戦するが、かなり厳しいので、数度チャレンジしたが結局断念。一度滝の傍に戻り、一部水流の中を突破して右の沢を詰めるように進むと、なんとか登ることができた。こちらのルートは最初に水流へ上半身をぶっ込むところと、細いバンドに上手く足を掛けて登っていくところがポイントである。最初からこちらにトライしておけば、かなり時間が短縮できたいただけに痛い失敗であった。この右の沢を上部まで詰め、少し左に藪を漕げば、三ノ滝上部に合流可能。この滝を越えるだけで、およそ二時間半も使ってしまったが、その分藪を抜けた時の感慨はひとしおである。思わずハイタッチして喜びを共感する。 |
万太郎本谷の核心部 三ノ滝 (二段30m) |
二段目は、この水流に突っ込めるかが勝負 | 後はバンド沿いに右へ逃げる |
そのまま沢を詰めて、後は左へ藪を漕ぐ | 三ノ滝を越えて歓喜する二人 |
ここからは二俣、奥ノ二俣と共に右側へ進み、いくつかの小滝を越えて、ひたすら詰めていく。水枯れとなると笹藪に覆われたスラブ状の岩の登りがひたすら続く。辛い藪漕ぎは無いが、あざみの葉のトゲが手に刺さるのがやや不愉快。薄いガスに覆われる中、最後の稜線が見えてくる部分の詰めは、いかにも谷川的で心が躍る。明瞭な踏み跡を辿り、笹藪を漕ぐと、ようやく登山道に合流。11:30肩ノ小屋に到着し、沢装を解除する。稜線はガスに覆われ、風が強くてひたすら寒い。荷物を置いて、肩ノ小屋に入り暖を取る。熱々のカップラーメンが異常に上手い。 ここからトマの耳はすぐなので、軽くピストンして、12:00谷川岳山頂着。持ってきたカメラの調子がよくなく、ピントが全然合わないのが気に食わない。晴れていればここから万太郎本谷の全景が見えただけに、少々残念である。 12:10肩ノ小屋に戻り、下山開始。予定では西黒尾根を下山するはずだったが、天気が悪いので天神平に向かうことにする。今まであれだけ天気が悪かったのに、天神平付近では何故か晴れており、むしろ暑いぐらいである。サクサクと歩いたので、肩ノ小屋から天神平まで一時間を切っていた。それにしても、数時間前に三ノ滝で苦戦していた時と、今の天神平ののどかさのギャップを考えると、何とも言えない不思議な気分である。 ロープウェイで下山後は、バスで水上へ。打ち上げは、久し振りに沼田の山彦へ行く。今回のトンカツの厚さはいつも以上のボリュームであった。さすが山彦。最近の現役は山彦の存在を知らない者も多い様なので、是非利用して欲しい。 |
肩ノ小屋へ詰め上げる | 強風・ガスの谷川山頂 |
何故か晴れの天神平 | 山彦は、相変わらずのボリュームでした |
成果/反省 上越の名渓、万太郎本谷の遡行ということで、現役にとってはいつもより難易度が高めの沢登りであった。残念ながら天気は悪かったが、プラス思考で考えると、雨天時ならではの危険や注意すべきことが身にしみて分ったと思うので、非常に有意義であったと感じる。新人二人は、夏合宿に向けて沢登りをやってきていたということであったが、期待値以上の実力で非常に頼もしかった。今後の成長が楽しみである。 沢の総括としては、個人的に同格に上げられる湯檜曽川本谷と比べると、それほどでも…という感じはあったが、やはり天気による影響は大きいのであろう。どちらかというと試練系の沢ワンダリングであったが、そういうのもやはり終わってみれば達成感があり、良い思い出である。上越の沢は厳しくも美しい名渓が多いので、現役にはしっかりと実力を付けて、いろいろ挑戦してもらいたい。 |
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