8月10日 いざ!南アルプス深部へ!!
まさかの早朝4時40分に高田馬場駅集合という鬼畜スケジュールとなった。何故このようなことになったのかと言うと、理由は簡単でアクセスの悪さ極まりないことにある。ことの成り行きによって、私とUさんは応援部4年生の家に宿泊させて頂くこととなった。Hは研究室で、Mは早稲田の寮(下宿先)で夜を明かす(正確には、出発前に夜は明けないのだが…)ということであったが、寝坊しないかどうかLとしては非常に不安であった。
あまりの暑さと寝不足故にリーガロイヤルホテル前からタクシーをチャーターすることとなった。既にHがガードレールに座って眠っていた。Mも無事に到着し、予定通り出発できることに安堵する。誰も見送りには来ないだろうと思っていたが、4年のYさんと62代Nコーチが見送りに来て下さった。虫除けスプレー等の差し入れを頂き、出発。
18切符の旅は、静岡付近の通勤ラッシュに紛れる形となった。鈍行列車で4時間の旅だ。この時間を利用して(既に全員の名前が出てきてしまっているが)メンバー紹介をしたいと思う。
先ずは期待の新人M。この時はまだ、周囲にも「優秀なイケメン法学部生」だと思われていた。中学・高校とワンダーフォーゲル部に所属、山の経験はピカイチの彼は確かに錬成合宿ではその強さを遺憾なく発揮してくれた。リズム感と音感の無さについても彼の右に出るものは居ないだろう。
続いて2年H。研究室で忙しい中、山ラウンドのみ参加出来る事となった。かなり久しぶりの長期縦走となるが、持ち前の器用さでこなしてくれることを期待している。因みに、彼も部内有数のイケメンであったが、変態的要素を兼ね備えている。そのギャップが良いとは誰も思わない。
山ラウンドSLで今合宿総合LのUさん。最強の肉体美と誰もが羨むイケメンである。事務作業のスピードとパッキングの美しさは、誰もが「神」と崇める程。「女の子が寄って来すぎて困るんだ、本来は」等、モテ男発言を部室でリアル・ツイートしている。ボートの技術も素晴らしく、私が新人時代から背中を追い続けていた存在である。
さて、以上が「イケメン・クールなボート隊」のメンバー紹介である。しかし、今回は隊名が「Hybrid隊」、即ち「イケメンとキモヲタのハイブリッド」を掲げている隊であるので、後者が居なければならない。皆様、薄々お気づきだとは思うが、私がその後者である。
今合宿SLで山ラウンドLの3年F。早稲田キャンパスを常に一人で歩き続けており、授業中も常に一人。ワンゲル関係者以外の「話したことのある早大生」の数は、(就職活動以前は)片手で数えられたそうだ。そんな彼が週2コマの授業を選択し、合宿で2コマとも欠席した暁にはどうなるか…想像するのは容易いことである。そんな彼のことを人は「ぼっち」(「一人ぼっち」が語源)と呼ぶが、彼なりに「ぼっち」としての学生生活に一つの美学を見出しているらしい。
あまり語らないうちに静岡に到着してしまった。昨年の高松までが異常に長かった為だろうか(13時間かかった…)、非常に短く感じられた。
静岡駅はかなり発展していた。これでは山ラウンド終了後に予定していたステビのままならない。一時解散とし、私はバスの受付でチケットを受け取る。再集合したものの、バスのチケットをよく見ると、出発時刻が「9:50」と記載されている。東京で調べて計画書に載せたのは「9:05」である。バス会社に確認してみるが、私の方が間違っていたらしい。メンバーに謝罪をして、再解散とする。バス会社の陰謀であると未だに信じ込んでいたのだが、9:30分位になると、ザックを背負った人たちが沢山やってくるので、諦める。
バスは既に長蛇の列となっていたが、観光バスが2台やってきた。非常に快適である。気付いたら2回目の休憩ポイントに到着していたが、1回目はどこだったのだろうか…。
畑薙第一ダムの駐車場はとても広いのだが、車がギッシリと停められていた。人気のルートであることを感じさせる。東海フォレストのバス係に「登山口まで」と言うと、「これから登るの?」と聞かれた。現在時刻は14:30。登山道までバスで1時間。小屋までは7時間かかるというのに、登る人間が居るものか!と突っ込みそうになるが、登山口で寝るなどという発想も一般人には無いのだろう。このやりとりは、ドライバーと本部の無線のやりとりでも行われていた。
人間を替え着のように強引にパッキングしたマイクロバスから脱却し、登山口に到着。屋根があって意外と快適だ。何よりテントを張らなくていいのが非常に楽だ。まだ4時前だというのに、UさんとHは颯爽と寝る準備を始めている。登山客が何人か降りてくるが、無視して寝ている。
私も食事と歯磨きを終えて寝る。今日の失敗を明日からの行動で挽回してやろうと心に決めていたら、興奮しすぎてあまり眠れなかった。星が綺麗な夜であった…ような気がする。
8月11日 嗚呼、遥かなる3000m峰
2時起床。朝食をさっさと済ませて出発。快適な登りの登山道が続く。Hは前回のW-ingの反省をきちんと活かせているようだが、流石に遅すぎる気もする。しかし、膝の故障を抱えての長期縦走、初日から飛ばしても良いことは無いのでのんびり進んで行く。ペースを落とすことで時間がかかることを想定しての2時起床である。
登山道は歩きやすいが、一部の梯子らしきものが崩落しかけていた。吊橋はなかなか恐怖心を誘うもので、よく揺れる。沢の近くということもあって比較的涼しげな道を進んでいく。途中の会話としては、Uさんが大好きな『耳をすませば』のストーリーを語っているのだが、「雫が図書室に行ったのだけど、鍵が開いていなくて、保健室の○○先生の所にって『おい、図書室空けろ』って言って、『少し待ってろ』って言って、鍵を開けてもらって…」といった感じで、ストーリーをこと細かに説明している。
沢の近くで1本取ることにして、沢の水を飲んだり頭を洗ったりして楽しむ。水が冷たくて気持ちいい。休息も程々に小屋へと向かう。沢で休憩したところからは本当にすぐ到着した。 時の到着であった。聖平小屋は非常に広いテント場があり、幾つか分かれていた。私達はかなり早い到着であった。小屋の人からフルーツポンチの差し入れを頂く。ここぞとばかりに紙コップに寒天をパッキングしていく。まさか山でこのような味にありつけるとは思ってもいなかった。
ここから食当点火の2時までは完全フリー。皆、上裸になっている。寝たり、本を読んだりと思い思いに過ごしている。私はメンバー内で唯一、ちゃんとシャツを着た状態で本を読んでいた。
食当は雑炊形式のハヤシライス。ソーセージを持ってきていて正解だった。C1から出して他の日に無かったらからかってやろうと思っていたらしく、Uさんが「明日はあるの?」「明後日は?」「明々後日は?」と聞いてくるので、「上手く使えば予備日もあります。」と切り返す。食事の楽しみを増やすのもLの役目である(嘘)。
通り掛りの登山客の方に「どこにっても早稲田の学生はいるんだねぇ」と言われた。サークルも沢山あるので、そのようなことになるのだろう。しかも数年前、当時のワンゲル部員がこの聖平小屋でスイカ割りをしていたらしい。何時のことなのだろうか…この山域もよく歩かれているので、判断がしにくいがワンゲルの伝統なのだろうなぁと納得していた。
上級生ミーティングをやり、TPを簡単に済ませる。Uさんからのマルチビタミンも頂いた。全体ミーティングをやって18時には就寝。起床係はMにする。理由は特に無い。幕場で余裕があると非常に快適な山行となる。8時間しっかり寝て、明日に備える。
8月12日 聖なる山!聖岳!!
2時起床。食当をやらなくていいのは朝に余裕が持てて嬉しい事なのだが、シュラフをしまうのが大変だ。そして、食当時間が短いので、朝が一番大変なのは自分であると後から気付いた。Mのシュラフが異常にデカイが、練習だと思ってそのままにしておいた。
撤収はこの日もスムーズ。Mのパッキングは相変わらず形がいい。星空観察のために皆エレキを消していたのだが、Mだけ付けっぱなしだった為、注意を促した。空気の読めない男である。
エレキのスイッチとやる気を入れていざ出発!いよいよ今合宿初の3000m峰、聖岳に挑む。地形的には回り道をしなければいけないので、Hは昨日面倒だと言っていた。小聖から臨む聖岳は非常に格好いい山で、「聖なる山」というその名の由来も分かる気がした。ヤセ尾根で足元に注意をしなければならないのだが、朝焼けの美しさに目を奪われる。心洗われる美しさであった。
最後は根性一本で聖岳山頂に到達!風があるが朝焼けの見える最高のコンディションだ!皆で写真を撮ったりして楽しむ。イケメンの3名はやはり画になる。それなのにUさんは何故か後ろを向いている。それでも格好いいのが羨ましい。
遠くに見える悪沢岳は…遠いわ!と突っ込みたくなる程に遠かった。その名の通り、悪そうな顔をしている山だ。
今日は行動時間も長いので、足を進めることにする。兎岳方面に歩いていくと、絶壁も幾つかあった。別に歩くわけではないので、見ている分には景観として楽しめる。サクサク歩いていくと、藪の中から突然二人組が出現した。赤石沢を登っていたらしい。57代のHコーチも登っていたと仰っていたことを思い出す。(その時は赤石岳もガスっていて、風が強くて低体温症になりかけたほどだったそうだ。)
兎岳避難小屋は昨年まで屋根が無かったそうだが、今年は改善されていた。まぁリミットも切れたのでお世話になることは無かったが。兎岳は写真だけ撮ってスルー。サクサク歩いていく。MもHも順調に歩けていてあり難い限りである。Uさんがジブリについて語りまくっている。『借り暮らしのアリエッティ』のストーリーをまたまた細かく説明している。人とすれ違うときに中断されるのだが、私もポスターしか見ていないのにアリエッティの内容を語れるまでになってしまった。
下り坂はやはり膝への負担がかかってくるようなので、長めの休憩を取ったりして休ませる。1時間に1本休憩をとるということはちゃんと基本にしているが、時間に余裕があるのでこのような判断もありだと思う。
テクテク歩いてこの日の幕場である百間洞山の家に到着した。標高は2500m近くあるのだが、気温がかなり高い。小屋の近くを流れている沢の水を皆飲んだり、頭を洗ったりしている。小屋の人に「飲用には適していない」と言われたのだが、伝えたときにはもう遅かった。
幕場は指定制であったが、早めに到着したので、水場のある小屋に近い所に張ることが出来た。しかも直ぐ近くに沢が流れている。水が尋常ではなく冷たいのだが、とても涼しい。なのに、皆上裸である。ただ、日陰がどこにも無いので、「パッキングが…俺のパッキングが…」と訴えるUさんを装備係のHが「団配増やしますよ?」という一言で封殺した。ツェルトを張って日陰を作る。あまりにも時間が有ったので、持ってきた本を読み終わってしまった。文庫本とはいえ500ページ位あったのだが。
小学生と思われる小さな子供とお父さんの2人組が隣のテント場に来たので話を伺ってみた。何と私達と同じルートを逆方向に歩いているというではないか。話を聞くと、親子で3000m21座の制覇を目指していて、現在11座。この縦走で15座まで伸ばすという。しかも、幼稚園の卒園記念で冬の西穂高岳に登るとは…。写真を見せてもらったが、本当に登っていた。普段高山に住んでいるから裏山をスノーシューで歩き回っているのだという。お父さんも凄い人なのだろう。とりあえず、早稲田ワンゲルに勧誘しておいた。ここ重要。
この日も14時に食当点火。あまりにも暑いので沢まで行って食事をすることにした。とても冷たい沢に足を突っ込みながら、とても熱い丸食を抱えて食事をする。ロシアのバーニャでも思ったことだが、これらの中間が欲しいものだ。
この後の流れは昨日と同じである。Mにいろいろ振ってみるが、相変わらずリアクションが面白い。Hybrid隊発足当時は、あまりいじらない方向だったのだが、Mがあまりにもいじり甲斐のあるキャラクターなので、上級生のリッミッターが外れてしまったというわけだ。面白い話を振ったにも関わらず、面白くなかったという理由で、今日の起床係もMにした。
8月13日 南アの盟主は格好いい!!
2時起床。今日はペルセウス座流星群が見られるということで、体操中は勿論エレキを消灯。体操中だけで10回ほど流れ星を見られた。とても幸せな気分になる。いつまでも見ていたいという欲望を抑えて出発。今日は南アルプスの盟主である赤石岳に登る日だ。暗くて進みにくいが、百間平付近は開けていて非常に快適だ。赤石岳はまだ遠いのだが…。
赤石山頂のまでの登りはなかなか長い登りであった。ちゃんと地図を見ていないとエセピークに心を折られることだろう。この時私が新人であったら、心が折れかけていただろうという自身がある。
赤石岳山頂は朝焼けで綺麗な赤に染まっていた。聖岳同様に写真を撮りまくる。因みに、赤石岳山頂の電波状況は「docomo au△ softbank×」ということらしい。写真を撮る際のUさんのポーズも相変わらずだが、皆で真似をしてみる。今日下山するというおじさんからスニッカーズを貰ったので、あり難く頂くことにする。HとUさんはスニッカーズが入っていたジップロックについて語り合っている。何の必要性も感じられない会話である。
赤石岳からサクサク下りて、荒川岳方面へと向かう。荒川三山の姿も良く見えるようになってきたが、相変わらず遠く感じられる。しかし、進んでいくとすぐに荒川小屋が見えてきた。遠目に見ても良い感じの小屋である。この日の行動はあっという間に終わってしまった。山R最後のテント設営も問題なく終えていつも通りのFree timeを過ごす。UさんとHは会計について色々と話をしている。Hは効率性を求めるだけではなく、もう少し自分で考えてオリジナリティを出す努力をして欲しいと思う。彼の力無しでは65代は回せないのも事実なので、一層頑張って欲しい。
地球の自転の影響で日陰がどんどん変わっていくので、ウレタンマットを移動させながらのんびりと過ごす。食当まで暇で仕方ない。しかし、早く食事をしても空腹が待っているだけなので意味がないのである。
食当もその後の流れも普段どおりである。Mは山R中ずっと天気図を書いているが、最後の仕上げで投げやりになっていることが伺える。直していかないと大変なことになるだろうから、注意をする。
今日もMに話を振るが、相変わらずオチが無い。よって面白くないと判断され、この日も起床係認定。18時に就寝としたが、30分前には皆横になっていた。
8月14日 3000m峰制覇へ!
後から話を聞くと、皆は昼寝をしすぎてあまり眠れなかったそうだ。ワンゲルの活動中にここぞとばかりに人生の睡眠時間を稼いでいる私は何の問題も無く、2時の起床コールが起こるまで熟睡していた。
太平洋高気圧に覆われて快晴の日が続いていることや、山深い故の空気の良さ、周囲の明かりの少なさのせいだろうか、今日も星が綺麗に瞬いている。プラネタリウムに通っていた高校時代のことを思い出すが、その時頑張ってつけた知識は、年をとると共に忘れてしまった。
今日は3000m峰を2座、私の心持としては3座登る。荒川中岳と東岳(正式名称は荒川東岳で、悪沢岳のこと)の2座は国土交通省にも認定されている3000m峰なのだが、悲しいことに荒川前岳だけは認定されていないのだ。3000mを越えるピークであるというのに可愛そうなことだ。まるで自分みたいな奴だと思って無理矢理にピストン計画をねじ込んだのである。
稜線に出る分岐に荷物を置いて、空身で前岳に登る。ガスが立ち込めていて景観は全く無かったが、何故だろう、いつ振り返っても登って良かったと思うのだった。荷物を持ってすぐ傍の荒川中岳に登る。遠くに見える(そう見えるだけで結構近い)悪沢岳には笠雲がかかっていた。本物を見るのは初めてであったので感動した。笠雲の特徴を聞いてみると、Mはちゃんと理解していた。関心関心。
写真を撮っていると、悪沢岳からの御来光を目にすることが出来た。ゆっくり鑑賞していたかったのだが、皆が写真を撮ってくれとせがむので、あまり鑑賞していられなかった。まぁ、私も写真を撮ってもらったのだが。綺麗な日の出に満足したと思ったら、急に日差しが強くなってきたのでサングラスを付けさせる。ここですかさずMをいじる。私も相変わらず「ムスカ大佐!」と揶揄されたのであった。
エアリアには悪沢岳まで120分と書かれていた…筈なのだが、60分ですぐ傍まで来てしまった。最後の最後で「紺碧の空」を歌う。Lとしてやるのは初めてで、「ここまで来れて良かった!」という思いが込み上げてきた。
山頂でジンジャエールの差し入れを出す。4日ぶりの炭酸に皆満足…してくれていたらあり難い。2年生のHには制限をかけていたので、私が頑張るしかなかったのだが、差し入れが少ないというのも少し寂しい。
悪沢岳でのんびりしていると、若者が1人でやってきた。何と甲斐駒ケ岳の黒戸尾根から登ってきたのだという。南アルプス全山縦走!!何と羨ましいことか!!写真をとってあげようとしたのだが、iPhoneのメモリーが一杯だったようで、写真を消すのを待っていたら時間がかかってしまった。
さっそうと駆け抜けていく若者は学生だったのだろうか。社会人ならこんなに長期の休みは取れないよなぁ…とか思っていたが、風も強いので出発する。今晩は待望の小屋泊だ!と皆楽しみにしている。千枚岳に向けて進んでいくが、この下りが意外と曲者。少々怖い岩場を越える。丸山付近はリラックスムードで歩いていける。遠くに悪沢岳が見え、意外と良い奴だったなぁ…と振り返っていたときに、重要なことを思い出した。
「式典やり忘れた~~~!!」
「別にいい。」というUさんの一言で事なきを得たが、無事にここまで登ってこれたことに安堵するあまり、完全に忘れていた。だが、この話題も可愛い雷鳥達の登場ですぐに飛んでいった。
千枚岳の山頂付近も一つ大きな岩場があったが、見た目以上に攻略しやすかった。くだりで行くのは少し怖い気がする。中高年のご夫婦はかなり苦労していらっしゃった(=かなり待たされた)。
千枚岳山頂からの悪沢岳の景色は最高だ!3000m峰では無いが、皆で写真を撮る。線迷小屋まではあっという間で、『思い出ぽろぽろ』の話と、『デジモンシリーズ』の話で盛り上がる。確かにデジモン三部作は全て見るべきだと思う…合計162話あるのだけど。
千枚小屋、これまた立派な作りをした小屋だ。ここで泊まれるのかと思ってワクワクしていたが、どうもこの新館は食事を小屋で食べる人の為の宿泊施設らしく、素泊まりの人は泊まれないらしい。一同驚愕ではあるが、素泊まり用の「百枚小屋」という小屋に案内された。まだ誰も居ないので個装整理等をして昼寝をする。今晩は最終夜なので食当を30分早めに開始するよう指示を出し、私も小屋で休むことにする。雲がかかっていて下界の様子は伺えないが、綺麗に咲いている花々とも相成って、何とも幻想的な雰囲気を醸し出している。
この雑炊形式のカレーにも大分慣れた。このメニューに於いて、ソーセージはやはり偉大であるとしみじみ思う。Uさんは相変わらず肉増しを所望されるが、Hは華麗に無視をしている。それにしても、Hの食事量は新人時代に比べてかなり増えた気がする。「山では意識して食べている」というが…私は山での食が細いほうなので(特に朝はいつも食べ切るのに必死である)、食べられる隊員がいるのは有り難いことだ。
最終夜の差し入れは、Uさんから缶ジュース2本。私からはYEBISUを2本、カルピス1本、プリングルスにチータラという比較的人気のあるものを集めた(つもりである)。「持って来過ぎだ」とUさんに言われてしまったが、これでも非常時に人を担げる余力を残しておけるように考えて持ってきているのでした。
メンバーが少ないことに比例して差し入れも少ないので、最終夜は比較的すぐに終わった。Hと私はビールが温かったので、折角のYEBISUがあまり美味しくなかったことを残念がる。カルピスは頑張って飲んだが、Mの薄め方は薄すぎて味が無かった。私やUさんは濃い目が好きなのだが、それも大阪と名古屋という出身地の違いによる味覚の違いなのだろうか。
そんなMに合宿を通しての感想を聞いたが、相変わらずさっぱりとし過ぎていた感は否めない。Hの有り難いお言葉は、Mに響いたのだろうか。山Rでの反省を活かして川Rに臨んでもらいたい。
小屋の中で既に寝ている人たち(まだ17時なんだけどなぁ…)の迷惑にならないようにして、18時最終就寝とした。
8月15日 堂々の帰還!
2時起床。小屋の中はやはり快適で、今日もバッチリ熟睡できた。コソコソと小屋の外に出て食当を行う。私は眠い目を擦って一人、シュラフの収納に明け暮れる。
食事を摂って、パッキングを行う。昨日のうちにかなり個装整理が出来ていることや、テント撤収が無いこともあって、とても早い。体操をしてから出発する。この日だけはあまり星が見えなかった。
ゴールの椹島までは、緩やかながらも下り続きなので、膝への負担を心配していたが、痛み等を発症することは無かった。途中で道が複雑になっているので、(登山道が一部廃道となり、作業道が登山道になっている)注意が必要だ。特に事前準備で。地形図は現段階では更新されていないので、エアリアを参照しましょう。因みに、清水平は看板があるが意外と気付きにくいらしい(Hが気付いていなかった)。ここで、HのMに対する読図確認が甘いことが発覚した。こういうところで投げやりになってはいけない。しっかり注意する。
椹島までの登山道は、変わっているとはいえきちんと整備されている印象だ。一部の梯子が腐食していたものの、それ以外は初心者の登山者でも迷うこともないだろう。かと言って、スニーカーとジーパンで登りに来るのはどうかと思うが。バテバテになってるし…。
意外とあっさり椹島に到着。「登山基地」と名を打っているだけあって、とても広い敷地を持っていた。靴を洗ったり、団配を整理したりして、シャワーを浴びに行く。湯船は無かったが体を洗えるだけでも幸せだ。さっぱりしてからフリータイムとする。Hはまたテントサイトの日陰で上裸で寝ている。Uさんも寝ているので、私はMを誘ってアイスクリームを食べに行く。詐欺だと思った。
その後は河原に行って透き通った大井川上流部を眺めていた。集合してからバスが車では、おもむろにトランプを始める。ダムまでのバスは相変わらず混み合っていて、人間をパッキングしているのだった。ダム到着後も乗り継ぐバスを待つまではトランプをする。静鉄のバスは非常に快適なので、皆惰眠を貪る。何故か同期のSから電話があり、沢隊がエスケープをとったことを聞く。
バスに揺られて静岡の都会に戻ってくる。本間とは「じゃ!お疲れ!」の一言で別れ、ボートR用の虫除け等を買いに行く。この日は吉野家で打ち上げの食事をし、コインランドリーに行ってからコンビニで荷物を下呂に送った。
皆で駅前のネットカフェに入り、夜を明かした。インターン選考のWeb適性検査を3件ほどこなし、この記録を書き始めている。翌日は午前中が休養日なので、どこに行こうかと考えている間に、私の意識は夢の中に消えてしまっていた。
文責 F
コメント