3月3日
16時30分に新宿高速バスターミナルに集合する。3名のOBの方と橋下、吉村に見送りに来てもらう。今回は福永が留学中なので、3年と1年のみの5人パーティーとなる。集合写真を撮り、バスに乗り込み東京を発つ。
長野駅についてからは、佐久間さんの追悼登山に四ツ岳に行っていた、大家監督・廣光コーチ・春田コーチ、青木さん、恵一朗さん、大門さんから見送って頂く。場所を変えて二度も送って頂けた。
エクレアを貰い電車の中で食べる。終電で南小谷駅に22時50分に着く。軽く雪が降っていたが、駅の外で寝る。
3月4日
5:00起床-6:35行動開始-12:20行動終了
朝起きて、駅は早く開いたので中でタクシーを待つ。タクシーで温泉街の上まで登り切るころには、大分明るくなった。金を払い、荷物を持って歩き出した瞬間、道路の上の氷で足が滑り盛大に転んでしまう。歩くのに問題はないが、腰をしたたかに打ってしまった。
除雪された林道の、ギリギリの所は1mの雪の壁になっていて、足を蹴り込んで登る。ここで板を履き、行動開始する。
しばらくは何ともない林道をひたすら歩く。ショートカットを挿みながら、1時間ほど歩く栃ノ木荘に着く。ここの下の沢沿いの道を歩いていると、斜面に流れた跡があり、河原にはデブリの後があった。雪をかぶっていて、新しい物ではなかったが、念のため危険箇所として一人ずつ通過する。その先の橋のすぐそばには、ついさっき雪崩れた痕跡のある斜面があった。ここですでに雪崩への危険認識は高くなる。
S字に林道が曲がるところで、雪が思ったより積もっていることに気が付く。それまでは普通に歩いてこられ0たが、ここでは斜面に林道が走っていて、雪が斜めに積もっていて、歩くには危険そうに見えた。とりあえず内山に途中まで歩いてもらったが、傾斜がきつく、渡切れそうになかった。向かいの斜面には表層の雪崩の痕跡が見える。ここで林道沿いに進むことをあきらめ、早めに尾根に乗り進むことにする。林道から外れ、細い尾根に乗るが、しばらく登るとスキーを付けたままでは登れない地形になる。プレ春合宿で練習したシートラを発動するが、ある程度まで進むと、それでも登れないくらいの傾斜になってしまった。いつまでも斜面にいては危ないので、このルートも諦め、少し早いがこの日は安定した場所に幕営し、私と内山で偵察して翌日以降のルートを開拓することにした。
林道の斜面の手前の沢筋から空身で登ろうとする。しばらく登って尾根に乗り、さらに進むとスキー板も外してある程度の高さまでは登る事は出来た。しかし、翌日全装備を背負って登るには傾斜が強く、高くなればなるほど危険度が増し、1年もつれて登るのは無理だろうと考えた。時間が経つにつれて雪面が緩み、表層の点発生雪崩が頻発していた。この日は時間が経ったので、テントに集まり、3年3人で相談後、最終的にこのルートからの入山をあきらめる決定をした。電波が通じたので監督に電話をし、ルート変更を伝えた。こちら側からは登れなくなったが、最終目標の焼山には登りたかったので、下山ルートから登る事にした。散々時間をかけたが何とか納得のいく結論に至ったので、全隊に伝える。明日の行動のために下山ルートへのアプローチを検索し、この日は終わる。
3月5日
4:00起床-6:00出発-7:45中土駅-9:00糸魚川-10:50笹倉温泉発-14:20幕場着
この日はできるだけ早く下山し、笹倉温泉に向かう必要があった。ヘッドライトの明かりの中で用意をして、昨日来た道を引き返す。歩きながら携帯でタクシーを呼ぶ。昨日見た所は、昨日の陽気で暖まった後、今日の朝の冷気で固まっているようだったが、相変わらず通れそうにはなかった。
一時間ほどで戻り、タクシーに乗り、中土駅に着いた頃にはすっかり明るくなっていた。ここから日本海に面した糸魚川駅に向かう。よく覚えていなかったが、この電車は62代の夏合宿でも使っているはずだ。せっかくなので、バスを待つ間に日本海を見に行く。振り返ると焼山も見える。しばしの休息の後、バスで笹倉温泉に向かう。
ここでも除雪された林道の終点から、2mほどの高さの雪の上に乗る。出発から5時間、11時頃には再び行動開始することが出来た。川を渡る時には、橋の上いっぱいに雪が載っていて、手すりの高さすらも越えていたので、もし転んだらと思うとこれはこれで怖かった。
尾根に乗るとはじめは緩やかな斜面をS字カーブで登って行く。木が密集して生えていたのでショートカットはできなかった。休憩をはさんだ後の斜面は急になり、不規則についた雪もあいまって登山道通りには進めず、非常に歩きにくくなっていた。階段登高なども駆使してやっとこさ上に着く。途中スノーシューで登ってきた人は、地形にお構いなく真っ直ぐに登ってきた。
登り切った先は見通しの良い台地上になっていた。ここは何事もなく1時間程進み、焼山が見えて着たところでこの日は行動を終了した。
3月6日
4:00起床-6:00出発-8:40幕場着-11:00ピットチェック-12:00折り返し-13:00行動終了
出発準備をしていると、焼山の上に月が見えた。不要な食糧や残缶を木の下にデポしておく。幕場から見える限りは、歩きやすいところを緩やかに登って行けばよさそうだった。行動を始めて50分位したところで、焼山の台地に乗る必要が出て来た。沢状地形の中を進み、左に見える斜面を登る。この斜面は急で、時間がかかりそうだった。左右に切り返しながらある程度登ると、木の少ない斜面を横断する必要があった。ここで念のため一人ずつ通過する。
ここを登ってしまうと、焼山を正面に見据える台地に出た。太陽を遮るものがなく、暑いくらいの晴天の下、緩やかに登り焼山を目指す。傾斜が出てくる前に幕場を設定し、行動時間は短いが、この日はこれ以上進まなかった。雪を掘りテントを覆うように壁を作って、設営する。設営が終了し、しばらく休んだ後、明日の焼山へのルートの偵察と、もろもろの練習をする用意をした。
まずはスキーで十分な傾斜が出てくるまで登り、ピットチェックの確認をする。1年も何度かやっているので、手順は覚えているようだった。あとは速さと正確さを求めて欲しい。
ピットチェック終了後、アイゼンに履き替え斜面を登って行く。この斜面は雪が固く、スキーを履いていなくても足が埋まらなかったので歩きやすかった。焼山には溶岩の流れた跡のU字型の沢状地形があり、そこが渡れそうなポイントを見つけるため皆で偵察した。1年にとっては歩き方の確認も含まれていた。1時間ほど登り、よさそうな場所を見つけ、引き返すことにする。スキー板をデポした所まで戻り、そこから滑ってテントまで帰る。
無木立の大斜面の滑走はあっと言う間だった。板は良く滑り、斜面が広すぎて感覚がつかみ切れていないのか、なかなかテントに近づかないような気がした。しかし楽しい時間はすぐに終わってしまう。明日もう一度滑るのを楽しみにし、焼山をバックに記念撮影する。
陽が落ちてくると風も強くなり、上ミ中は非常に寒かった。
そしてこの日が最終夜となってしまう。明日も天気には恵まれそうで、山頂到達には期待できそうだった。話を聞くと、1年二人はどうやらスキーよりもアイゼンで歩く方が好きそうだった。明日は今日よりもアイゼンで歩くことが出来るので、それを楽しみにしてもらおう。
3月7日
4:00起床-6:00出発-10:30焼山山頂-12:30幕場着-15:15笹倉温泉着
薄暗い中焼山を目指して登る。昨日と同じところにスキー板をデポし、そこからアイピン歩行に切り替える。上に行くほど風が強くなり、寒くなってくる。沢を渡ろうとした所の辺りは背の低い木が多く生えていて、邪魔されて通り難かった。沢もU字型をしているので下りるには慎重にしないと、危なかった。高度を上げると高低差は低くなるので十分にあげてからわたるようにした。
斜面のトラバースでは雪が吹き溜まりになっているのか、足首まで埋まってしまうくらいの柔らかさだった。足場が崩れてしまいそうな不安感のあるところなので、十分に踏み固める必要がある。ここでは横からの風を受けて、地吹雪のようになり、時々景色が白く霞んで見えた。しばらく進むと、雪は薄くなり、地面が見え隠れするようになる。ここでは登山道を示すマークが見えるようになったので、それをたどるように登る。このあたりは傾斜はあるが、足場が安定しているのであまり恐怖感はなく登れる。
焼山の火口近くに来ると、更に風は強く感じる。突風が来ることもあり、マップケースが顔に当たって痛い。しかしここまでくると山頂はすぐだった。風の吹き付ける中、火口の周りを歩き、最後に真っ直ぐに登ると最高地点に着いた。山頂には広さがなく、風も強いので、一人ずつ写真を撮ったのち、早々に下山を開始した。
登った道をたどって下山し、まずは板をデポした所まで戻る。下りではあっという間で1時間とすこしでここまで戻ってしまった。最後は雪が固くなっているので、皆シリセードで板まで行こうとする。これは慣れていないと方向の調整が難しい。
再び板を履き、焼山の斜面を最後にもう一度滑る。楽しいピストン個装での滑降はこれが最後となってしまった。焼山に向かいつつ、積雪期最後の式典をする。雪山を始めたころには不安の多かった藤田も、このころには一度に滑れる距離が増えていて、前日の幕場までは1時間で来ることが出来た。焼山台地の緩い滑走をして、一度急斜面を下り、登りも交えつつここまで帰ってきた。目印にした木の下を堀って、デポした食糧などを回収する。これでまた荷物が増えてしまった。
登りで苦労した九十九折の林道も、一度通っていただけあって登りの時ほど苦労して下ることはなかった。上から見ると通りやすい所は分かりやすいようだ。しかし、終わり際に一か所罠が仕掛けられていて、青木が突然下っている時に転んで埋まってしまった。なかなかないので写真を撮ろうと近づくと、私の足下が急に抜け、片足が穴の中に入ってしまった。更に驚いて中にストックを落としてしまう。どうやら林道の全てに雪が積もっているわけではなく、側溝の上などは大きな空洞になっていた。青木は内山に救助され、私も本間の助けを得ながらザックを外し、穴の中からストックを回収する。その間に藤田は空洞がないと思われるところから通過させる。
そこから下は林道を道なりに滑って下り、最後に橋を渡って下界に帰ってくる。埋もれた道の上を滑り、二日ぶりの笹倉温泉が見えてくると、1年達も合宿がやっと終わって安堵の表情を見せていた。
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