75代年間方針『成長』

 

62代錬成合宿 HO!OH!甲斐駒隊 2011/6/14-18

合宿記録

この合宿の記録を書くことに正直ためらいがあった。自分の中でこの合宿は黒歴史と化していたからである。事前準備のミスから隊員全員を危険に晒してしまい、それをネタにすることに抵抗があった。なので、この記録に後の人たちが過ちを繰り返さないような、反面教師の役割を与えようと思う。

これは体調不良に陥りながらも懸命に歩き続けた男たちの真実の物語である。

 
6月13日(月)
C0 高田馬場―甲府―桃ノ木温泉 「ボクだけ小さい…」

Lが集合時間10分前に集合場所である高田馬場駅に着くと、すでに授業の関係で遅れてくる2年内山・竹内以外は全員揃っていた。いよいよ錬成合宿である。否応なしに緊張する。62代錬成合宿HO!OH!甲斐駒隊はLが私、4年大池。SLが4年保延、そして3年小山、2年内山・竹内・橋下、新人長谷川という7名である。時間になったので体調チェック・団配チェック等諸々のことをやる。内山・竹内が合流してから気象の確認をしていると、続々と現役やOB・OGの方々が見送りに来て下さる。2年生に渡されていく差し入れたち。酒類や野菜、スイカ、ペットボトルなど、いかにも錬成らしい差し入れが渡されていく。それにしても量が半端ない。野郎パーティーということもあって「マジでつぶしにきたな」と思わせる量である。2年生のザックがサイドポケットまで一杯になり、入り切らなかったペットボトルたちが3年や4年に回ってくる。出発時間10分前に再集合を命じ、しばし解散。時間になったら集合写真を撮影し、いざ出発!!

出発時に橋下がボソリ、「ボクだけ小さい…」たしかにこのパーティー、早稲田ワンゲルが誇るヘヴィー級メンバーが揃っている。身長175cm、体重65kgのLが小さく見えると言えば、この隊のメンバーの体格の良さが分かるだろう。中央線でモミクチャになるのは錬成のお約束である。途中なんと立川~高尾間で大家監督が激励しに来て下さる。差し入れも頂く。「ごっつぁんで~す」人身事故発生のアナウンスもあったが甲府に予定通り着く。甲府駅改札口に小山様と書かれた札を持った運ちゃんがいた。タクシーに揺られること40分。桃ノ木温泉に着く。登山口の場所がよく分からなかったので、3・4年生は偵察に。入口を見つけるのに苦戦したが、発見。戻って全体で明日の行程を確認し、23時30分就寝。降水確率が0%だったので、テントを張ることもなく林道の端でシュラポン。満月がキレイな夜であった。

 
6月14日(火) C1 
桃ノ木温泉―高谷山―夜叉神小屋 「頑張れ2年生!!」

4時30分起床。朝ご飯を食べつつ、5時までに出発準備完了をするよう命じる。トップは竹内にさせる。体操等を終え5時18分に出発。最初の尾根に取りつくまでの急登。地形図からかなり急であることは分かっていたが、それにしてもキツい。沢沿いの道を四つん這いになりながら攀じ登る。赤テープもまばらなので、全員でルートファインディングする。気を抜いたらどこまでも転げ落ちそうな斜面を慎重に登っているとトップの竹内が急に座り込んでしまう。「フラフラします…」という。全く落ち着けるような場所ではなかったので、なんとか尾根まで登りたかったが竹内は「動けない」と言う。仕方がないので保延を付け、その場に慎重にザックを下ろさせ、それ以外はザックが安全に置けそうな場所まで移動させる。竹内は昨日今日と全く食欲がなく貧血気味だという。とりあえず水を飲ませ、レーションのソイジョイFe+を食べさせるも状況は改善されず… しばらく休んでいたら竹内が徐に立ちあがり「なんとか行けます」と言う。本当に大丈夫なのか心配ではあったがいつまでもここに止まるわけにもいかないので先に進む。トップは橋下に交代させ、竹内はLの前に移動させる。竹内はまだ足取りが重い。なんとかかんとか尾根に取りつく。依然竹内はフラフラしているが、ここまできたら夜叉神峠までは気合でいくしかない。道もなだらかになったということで皆の口から歌が出てくる。

相変わらず赤テープはまばらだが尾根上を進めば問題ない。が今度は橋下のペースが上がらない。「頑張れ橋下!お前2年だろ!」桧尾峠から先、赤テープに従って先に進んでいたが、尾根を登るというよりはトラバース気味に進む。かなり道が細く、「落ちたら止まらんな…」という斜面をへばりつきながら進む。Lはこういう道が大嫌いである。やがて登山道が崩落した部分に出くわす。引き返すことも出来たが、偵察した小山が「なんとか行けます」と言うので10mロープを出させて行くことにする。こういう場所は沢隊である保延、小山が大活躍である。ザレてはいたが、足場はしっかりしていたので慎重にトラバースをする。少し進むとまた登山道が崩落している。今度は先程より少し長い距離が崩落していたので10mロープを2本出させ、小山を先行させる。トラバース気味に進み1つ目の10mロープを木と木に固定、続けてトラバースした箇所から少し下り登山道に復帰したところで固定。補助ロープをL字形に固定した。皆慎重に進む。保延をラストにし、ロープを回収させる。皆が安全に通過できフーッと肩を撫で下ろす。数百m進むのに30分以上かかってしまった… まだ微かに残っていた夜叉神峠の11時通過のリミットを切ることは諦める。

今日は夜叉神峠小屋で幕営だ。そうなると今日の行程はもうすぐ終了だな… 赤テープがトラバース気味に続いていたので、それに従い先に進んでいたが一向に尾根を登る気配がない。どうやら旧道か何かに入り込んでしまったようだ。尾根に復帰することは諦め、赤テープに従って進んでいくと高谷山を指し示す看板が出てくる。予定ルートは登山道に沿い、高谷山を南東の尾根から登るものだったが、この道は南の尾根から登るものであった。何はともあれ、これを登り切ってしまえば今日は終わったも同然だ。ペースが遅くなったこともあり竹内は復活していた。橋下は… もうすぐだから頑張れ!高谷山まで頑張りたかったが、橋下に熱痙攣の症状が出始めたので、あと少しで頂上というところで1本。とはいえ前に1本取ってから3時間近く経っていた。危険箇所通過などで動かなかった時間も多分に含まれてはいるがもう少し早く休憩を取れば良かったと反省… 2年生たちは少しでも荷物を軽くしようと1本のたびに差し入れの2ℓペットボトルを出していた。何か出るかなと思ったら小山が「知佳さんからの差し入れでーす!」と大型瓶の飲むヨーグルトを取り出す。「お前が出すんかい!!」という突っ込みはしなかった。「早く飲まないと腐ってしまうので…」という至極もっともな意見を言ってきたからだ。本日4本目のドリンクである。

新人の長谷川はヨーグルトが嫌いというので、上級生だけでいただく。疲れた時ほど甘いものが身体に滲み渡る。美味なり!!ここでトップを竹内に戻し、橋下をLの前に来させる。20分ほどで高谷山に到着。写真を撮り、さっさと移動。夜叉神峠小屋には12時30分に到着。最後は橋下がバテバテであった。老若男女問わず大勢の人がいたが、私たちのパンパンに膨らんだザックは明らかに異彩を放っていた。テント設営を開始するが2年生3人と長谷川だと余裕で3分切れる。試しに2年2人と長谷川でやらせてみると2回連続で3分切れた。明日からは3人でやらせることにする。夕食はすき焼き、由梨から卵の差し入れをいただく。割らずに運んだ内山、さすがは“パッキングの神”を自称しているだけある。上ミ、全ミを経て20時就寝。パパリコで長谷川が起床係となる。

 
6月15日(水 )C2 
夜叉神小屋―観音ヶ岳―鳳凰小屋 「運命の日」

3時「起床!」の声と共に食当開始。朝食後、15分で撤収準備を完了させるように命じる。「どうかなぁ」と見ていたが長谷川のパッキングは手際が良い。遅れることなく撤収できた。4時49分、錬成合宿2日目がスタート。ここから南御室小屋までダラダラした登りが続く。走っても良かったが2年生の体調も心配だったので、ここはゆっくり登ることにしよう。傾斜が緩いので皆積極的に歌う。8時18分、苺平到着。長谷川に読図チェックすると自分が苺平を過ぎていることに気付いていない。まだまだである。2日目にして竹内の歌集が切れる。10曲もなかっただろう。ここから彼はGReeeeNの「愛唄」やミスチルの「名もなき詩」を3~4回歌うことになる。歌集が少ないくせしてLと3曲も被せてくるとは何たることであろうか。長谷川はTOKIOを元気に歌う。橋下はポルノ・ミスチルを、内山はブルーハーツを、小山は… すまん!分からん!! 薬師ヶ岳小屋まで上がれば今日の登りは終わったも同然。稜線上に出ると南アルプスの雄大な山容が待ち構えているはずなのだが、ガスって何も見えない。

11時30分観音ヶ岳でタッパー飯休憩。見事に何も見えない。自分が今、標高2840mにいるということを実感できないのが残念である。新人ながら差し入れを持たされていた長谷川がザックからメロンを取り出す。(慧、いただきます!) タッパー飯はハンバーグ。人数分用意してなく1人半分ずつという計算だったらしいが、誰かが丸々1個食べてしまったらしい。Lにはハンバーグがなかった。が、このハンバーグを食べる・食べないという一見些細な出来事を記憶しておいてほしい。実はこの瞬間、隊員たちは運命の岐路に立たされていたのだが、そのことに気付くのはもう少し話が進んでからである。運命が動く瞬間というのは往々にして日常の小さな変化なのかもしれない…記念写真を撮り、山頂を出発したのが12時15分。分岐で鳳凰小屋に向かう。

300mほど下るが明日これを登り返すのかと思うと苦笑いしてしまう。決して緩やかな下りではないがトップの内山はガンガン飛ばす。内山は自分自身下りが苦手なので早く進みたいらしい。13時27分鳳凰小屋着。テント設営を長谷川・竹内・橋下の3人でやるが4回目でようやく3分を切れた。お前ら、昨日は1発で切れただろ!こういった無駄な時間をなくす努力をしてほしい。長谷川が意外と楽勝そうなので団配を増やすことに決定。明日はどうなることやら。起床係は橋下が自ら「やります」と立候補。夕食を食べ切れず、皆に食べてもらったお礼をしたいらしい。意外と健気なヤツだ。明日は予定行動時間11hという勝負の日なので2・3・4を決行。上級生に気合を入れる。19時30分就寝。余談だが保延が「佐久間がいない合宿は久しぶりだよ」と嬉しそうに 悲しそうにLに言ってきた。佐久間と保延は本当に仲が良いようだ。

 
6月16日(木) C3 
鳳凰小屋―アサヨ峰―仙水小屋 「死の14時間行動」

2時起床。辺りはまだ暗い。3時5分には朝食を食べ終わっていたが少しの間待機。3時30分に撤収開始、その前までにトイレや水汲みをしておくように指示。撤収は問題なく行え、3時55分行動開始。地蔵までの急登。「2年前、私はここで走らされたんです。」と小山が言う。長谷川さん(60代)… スパルタっすね… 鳳凰三山特有のザレた登りを、息を切らしながら進む。地蔵ヶ岳をおよそ1時間で登り切る。橋下がここぞとばかりに由梨から授かったオロナミンCを差し入れる。ゆっくりしたいが、早川尾根小屋10時というリミットに引っ掛かるわけにはいかない。先を急ぐ。赤抜沢ノ頭でようやく眺望が臨めた。北岳、間ノ岳、これから登る甲斐駒も!遠くは八ヶ岳や富士山、北アルプスまでも。長谷川は「スゲ-!」と言いながら嬉しそうに眺める。内山が長谷川の読図能力を試そうと目の前に見えている山が何か尋ねた。正解は高嶺なのだが、長谷川の答えは… 長谷川、出直してこい!Lはこの時、長谷川の読図能力が全然ダメだということを確信した。アップダウンが激しくメンバーは辛そうである。頼むから頑張ってくれ!

9時34分、早川尾根小屋通過。この時点でメンバーはだいぶ疲弊していたがここで止まるわけにはいかない。先へ進む。内山がとっておきの歌を披露してくれたが、あの歌はどうなんだろうね内山君… 内山の歌は関係ないだろうが、長谷川に異変が生じたのもここら辺からである。Lの2つ前を歩いていた長谷川が遅れ出す。団配に負けたのかと思い、「しっかり歩け!」と叱咤激励する。最初はなんとか応えてくれていたが、やがて反応がなくなる。登っては止まり、登っては止まりの繰り返し。ついにはミヨシノ頭を過ぎた辺りで立ち止まってしまった。「気持ち悪いです…」と言ってくる。橋下に医箱を出させてサクロンを飲ませるも状況は改善されず。このままのペースだと危ういので長谷川の団配を解除。メインを小山が、タッパー飯を保延が持つことに。団配を解除してからの長谷川はなんとか隊のペースについてこれていたが、相当キツそうである。

13時33分、アサヨ峰到着。300名山登頂おめでとう!!登った感想は某2年「鬼畜」、某2年「クソ山」、某2年「すごく楽しかった!(ウソ吐け!)」何個もあるニセピークに何度も心踊らされ、そして何回も裏切られたのである。2年生たちは精神的にズタボロにされたようだ。小山がエマージェンシー。他にも数名エマージェンシー。長谷川は相変わらず辛そうである。何かがおかしい。タッパー飯を食べるのに皆一苦労。ここから先は一気に下ると思っていた内山は栗沢山に行くのに、地形図では分からない程度の微地形、すなわち微妙な登りにたいそうご立腹である。15時32分、栗沢山到着。天気図作成の別働隊を竹内と小山で組織、先行させる。竹内があさっての方向に行こうとするので、慌てて止める。竹内君、分岐なのだからコンパスは見よう。雨が降り始める。天気図を書いていた先行組を途中で抜かす。雨足が強まったので雨具をつけさせる。仙水峠までの下り、この下りが永遠に続くかのように思えたがもう少しで今日の行程も終わる。仙水峠到着時点で17時10分。行動終了リミット18時ギリギリである。疲れ切った体にムチを打ち先に進む。

17時55分、仙水小屋到着。出発してから実に14時間。錬成合宿でもなかなかお目にかかれない行動時間である。時間もないので設営を全員でやり、即食当点火。皆沈み込んでいる。食事の時間がまるでお葬式のようだ。気持ち悪くて食べられないという者が多数。何かがおかしい。食べきれなかった米は空いているタッパーに入れさせ、汁ものは… Lが4杯食べる。Lだけ食の錬成である。体調チェックをするとL以外の全員が腹痛や吐き気を訴える。何かがおかしい。食当たりのような症状だが我らは運命共同体なはず。なぜLだけ何の症状も出ないのであろうか?ここで保延がボソリ「そういえば昨日食べたハンバーグの匂いが変だったような…」「……!」 かくしてタッパー飯のハンバーグが最も疑わしき犯人(ホシ)として挙げられた。憎たらしいまでにメンバーのお腹を緩くし吐き気を催させた肉、それが“パッキングの神”のあまりにも早すぎるパッキングによって引き起こされたというのはまた別の話である。疲れ果て、それに追い打ちをかけるかのように体調不良にも襲われ、未だかつてないほど暗いテント。明日の甲斐駒登頂に大きな不安を残し、びしょ濡れのテントがそれに不快感をプラスする。そのような中でLは1人元気であった!21時30分就寝。明日は甲斐駒登頂を控えていたが、皆疲労困憊しているので4時起床とする。

 
6月17日(金) C4 
仙水小屋―甲斐駒ケ岳―北沢駒仙小屋 「満身創痍でのアタック」

昨日、特に起床係を設けなかった(とてもゲームをする雰囲気ではなかった)が皆時間には起きた。優秀である。雨は弱まっていたが依然降り続いている。朝食も皆食えないというのでかなり量を少なくした。長谷川などは米が受け付けないようで汁ものしか飲めない。ここまで食べないとシャリバテも心配である。保延も気持ち悪く朝食を食べずにテントで転がっていた。食事終了後、甲斐駒にアタックするかを審議。安全を優先するならば停滞という選択もありだったが、皆「行けます!」という。本当に行けるかどうか不安であったが様子を見つつ行くことにした。文章的には3行程度で終わっているが、この3行の間に様々な思惑や葛藤が渦巻いていたことは推して知るべし。Lとして苦渋の決断をする。

雨具・スパッツをつけさせ、撤収させる。皆、トイレに駆け込み出発までに時間がかかる。本当に大丈夫か!? 6時15分出発。出発するがやはり暗い… こんな雰囲気では甲斐駒などとても行けないと思ったのでLがAKBを歌うことにする♪「ヘビーローテーション」、「ポニーテールとシュシュ」、「Every day,カチューシャ」、勢いに乗り次は「会いたかった」だ!さぁ歌おうとしたら橋下が割り込んできた。LのAKBメドレーを遮るとは… 橋下Good Job! 小山も乗ってくる。隊員数名は歌えるまでに回復したようだ。

1本毎にレーションを積極的に摂らせシャリバテしないようにさせるが、長谷川はレーションすらも受け付けないようだ。1本を取ってから30分くらいして長谷川が「気持ち悪い…」と言って動けなくなる。撤退という言葉が脳裏をよぎる。ひとまず休ませる。駒津峰まで行ければ荷物はデポする予定であったので甲斐駒登頂はなんとかなるのでは、という思惑がLにはあった。頑張ってくれ!長谷川! ただ、どうしようもなさそうなので2度目の団配解除。メインをLが持つ。これで隊のペースについていけないようなら撤退である。果たして、長谷川は辛そうであるがなんとか付いていけていた。長谷川の底力を目の当たりにする。霧雨の中を進む。樹林帯を抜け、ハイマツ帯を過ぎ、9時50分駒津峰到着。新ダンメインを設営して荷物をデポする。一時だけでも重荷から解放され皆嬉しそうである。駒津峰からはそびえ立つ甲斐駒の雄姿が見えるはずなのだが… ガスッて何も見えない。駒津峰から先、岩場を越えて六方石に着く。そこから先は直登ルートではなく巻き道を行く。返す返す言うが甲斐駒山頂は見えない。記憶を頼りに紺碧の空を歌うタイミングを切り出したのだが… いかんせん早過ぎた。反省します。

11時54分甲斐駒ケ岳山頂に到着。ガスッていて眺望が全くない。甲斐駒ケ岳、良い山なのだが天候のせいでそれが後輩達に伝わらなかったのは残念である。長谷川は解脱していた。2年生も最後のザレた直登には参ったらしくあまり元気がない。天気も良くなく寒いので、式典開始。早稲田の校歌が響き渡る。うーん、やっぱり晴れてないから高揚感がないなぁ。秋合宿は晴れたらイイね! 3度目の甲斐駒、過去2回は微笑んでくれたのにワンゲルの現役最後にして裏切られたのが悲しい。それでもなおLは甲斐駒を愛す。12時25分山頂出発。一気に下る。駒津峰で荷物を回収し、なお下る。2年生達は「あとは下りだけだから下山パワーで楽勝だ!」と言っていたがどうだろうね。双児山で少し登り返す。内山はこの登りがショックだったようで下山後、鬼畜三山としてアサヨ峰・栗沢山・双児山の名前を挙げていた。(他の2年は双児山ではなく駒津峰の名前を挙げていた。) 駒津峰で荷物を回収する際、メインを長谷川に戻していたがやはりキツそうである。「気持ち悪い、動けないです」と言うので双児山で1本とする。メインを保延に持ってもらう。

1本を取っているとどこからかグーグーといびきが聞こえる。その音の出所を探ると長谷川であった。1本中に寝る奴など初めて見た。それに気付いた竹内は苦笑する。よほど疲れていたのであろう。Lの出発の声でも起きないので「起きろ!」と喝を入れる。その時のことを長谷川に尋ねると… 起きると共に絶望したらしい。
地形図から急な下りであることは分かっていたので2年生が言うように楽勝ではないだろと思っていたがやはりキツい。ただ傾斜でいえば初日の急登の方がキツいように感じた。長谷川はフラフラしている。この時、長谷川は意識が朦朧としていたらしい。誰とはなく歌い始めてカラオケ大会になる。「あとは下山だけだ!」という隊員全員のエネルギーを感じた。フラフラの長谷川は合いの手すら入れる余裕がないようだ。歌集がとうに切れている竹内も聞き手に回る。橋下には歌い手の血が流れているのか、声を枯らしながらも懸命にミスチルを歌う姿に不覚にも感動してしまった。長谷川と竹内以外が順繰りに歌を歌って自分を、メンバーを盛り立てる。こういう時間がLはたまらなく好きである。どんどん高度を下げ、ようやく長衛荘が見えた。

最後はなぜかスピッツの「チェリー」を大合唱。17時18分、北沢峠到着。疲れ果てた長谷川の顔面が崩壊している。
今日も皆よく頑張ったよ。ところで、本日はいよいよ最終夜である。各自が自分を追い込むために歩荷してきた品を重い(・・)重い(・・)出す。その中で内山君だけは体調不良で差し入れを出す前に寝込んでしまい、結局最終日も歩荷することになった。それに収まらず、他の2年から“差し入れ持ってこなかった疑惑”までかけられ、踏んだり蹴ったりである。お前もよく頑張ったよ。竹内が熱い言葉を長谷川にかける。長谷川君に先輩の思いは伝わったのだろうか。皆、お疲れのようで1人2人と脱落しつつ夜は更けていった。

 
6月18日(土) 下山日 
北沢駒仙小屋―歌宿 「異界より、戦士(おとこ)たちの帰還」

5時30分起床。今日は歌宿までの林道歩きのみである。満身創痍のメンバーたちに「ようやく帰れる」という安堵の表情が浮かぶ。Lとしても体調不良の中、誰一人欠けることなく無事に帰還できることに感謝したい。今までで一番Lの重責を感じた合宿であった。といってもまだ合宿は終わりではない。林道はオーダーフリーにして各自のペースで行くが、3・4年と新人・2年でビックリするくらい差が出る。2年生はゆっくり行きたいようだ。林道での読図も長谷川はいまいち… 実はLは歌宿までの林道歩きが初めてであったが、色々な人の話を総合すると歌宿のバス停の前にトンネルがあり、それを見たら走れば良いらしい。

本日もガスっていたが、霧の立ちこめる中からトンネルがぬっと出てきた。なかなか雰囲気がある。このトンネルをくぐり終えた瞬間に非日常は終了し、煩雑な俗世間へと戻るのである。ということで、トンネルの前で一列に並び、全員ダッシュ!内山と小山が早い。長谷川はドタドタ遅い。遅いのでLが押してあげる。長谷川の表情は辛さとその辛さからようやく解放される喜びとで何とも形容しがたい顔となっていた。全体的にグチャッとなっているのだが、どこか嬉しそうというか… 
そんなこんなで8時45分に歌宿到着!体調不良にも負けず、全員よく頑張ってくれた。Lだけ苦しみを共有することができず胸中複雑であったが、預かっていた全員の命を無事に返せて良かった。意図しない形での錬成となってしまったが、諦めずに計画を完遂させたメンバー全員のポテンシャルの高さを垣間見られた気がする。本当にお疲れ様でした、と同時に夏合宿は比べ物にならないくらい楽しいからね!!(特に長谷川君に向けて言いたい。)

 

 

Waseda Wander Vogel

Waseda Wander Vogel

早稲田大学ワンダーフォーゲル部の公式HPです。

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