59代秋合宿 胎内尾根隊 2007/10/28-11/1

登山・縦走

 

期間  2007年10月27日~11月1日
地域  飯豊連峰
メンバー  L酒井 SL長谷川 小松 田中 筒井 古川 横塚

 


 

 10/27
15:05池袋出発-21:54中条駅

 

 台風の通過で強い雨が降るなか、14:00池袋駅東口のバス乗り場に集合。
「危機意識がなっていない!」、集合時間ぎりぎりに、ずぶ濡れになって走ってきた隊員に渇を入れる。先ほどからどうも緊張で気分がすぐれない。合宿でリーダー経験をするのは初めてなので、個人的にもこれから始まる合宿は特別な意味を持っている。台風は明日には通り過ぎているはずだ。手短にミーティングを済ませ、晩飯や飲み物などを各自買い足す。雨の中足を運んでくださった見送りの方々に激励され、15:05バスは池袋を出発した。
新潟に到着すると雨はだいぶ小降りになっている。JRのホームで明朝の予定を確認し、中条駅に移動。22:00過ぎには駅の軒下でシュラフに入った。強くなりだした雨と列車の通過が意識を覚醒させ、かなり遅くなってから眠りに落ちる。

 


 

 10/28
6:05奥胎内ヒュッテ発―9:40池平峰-12:05五葉峰―14:05滝沢峰―15:10幕場着

 

 4:20には、各自もぞもぞとシュラフから這い出し朝食をとっていた。5:00ちょうどに現れたジャンボタクシーに乗り、奥胎内ヒュッテに移動。深夜から本格的に降っていた雨は止み、澄んだ空気が冷たく湿っている。「予定通り行こうと思うけどいいよね」、SL長谷川に意思を確認し、最後の決断をした。いよいよ胎内尾根への冒険が始まるのだ。
「もう出発しますけど」。奥胎内ヒュッテから足の松尾根の登山口へ行く送迎バスは、どうやらわれわれのことを待ってくれていたようだ。はい結構です、と告げる。ここからの登山道は足の松尾根だけなので、バスの運転手は不思議がったに違いない。こちらは内心小気味よい。
6:05出発。車道から分かれる、テープのある踏み跡をたどっていくと、すぐに吊り橋があった。想像していたより整備されたきれいな橋だが、とてつもなく幅が細く、おまけに落ち葉が濡れていて非常に滑りやすい。慎重に渡る・・・と、筒井が滑って転倒。一瞬、場が凍る。その後ろで喚き叫ぶ、高所恐怖症の田中。

 

奥胎内ヒュッテ。いよいよ出発だ。これはないでしょ~、と歩っち。

 

 池平峰までは急な登りが続く。歩きやすい完全な登山道だ。少し傾斜のあるところにはロープが設置してある。途中、道が二つに分かれる。右のトラバースしていく方を選ぶが、結局道が途切れ、尾根まで直登する羽目に。「下のほうから女の人の泣き声が聞こえて無意識に行ってしまった」、トップの長谷川は不気味なことを言う。猿の鳴き声だと思うのだが・・・。その「女の人」はどうやらその後もずっとわが隊についてくるようだ。それにしても、池平峰まで3 時間半は時間がかかりすぎだろう。
雨量観測所を過ぎたあたりから、しだいに藪らしさが現れてくる。熊笹が太ももを擦り、潅木の枝が顔を打つ。だが足元にはっきりとした踏み跡があり、歩くのは楽だ。次のポコからの下りは急で、ロープを木にフィックスして降りる。このポコから1004mポコまで、紅葉した木々の間に鋭いナイフリッジが窺える。薄くなった雲の間から覗く青空に、色とりどりの葉や花崗岩質の尾根が映えて美しい。

 

池ノ平峰山頂。錆びた看板がある。紅葉の間からナイフリッジが見える。

 

細くガレた稜線。慎重に・・・。紅葉に染まる美しい尾根・沢。

 

手前に見えるのは五葉峰。その奥が滝沢峰。五葉峰からの下り。鎖が設置してある。

 

 五葉峰からの下りはまたしても急な岩場で、設置された鎖につかまってひとりずつ降りる。滝沢峰までは小さいアップダウンが繰り返す細い岩稜だ。しだいに藪も濃くなってくる。枝が顔を鞭のように叩いて痛い。目や鼻や耳の穴までもが繰り返し攻撃される。サングラスは持ってくるべきだった。
14:10ようやく滝沢峰に到着。今日の幕営地、小桜の池まであとわずかだ。一の峰まで続く尾根がよく見通せるようになり、気持ちが高まってくる。「疲れてきたけどまだまだ余裕です」、と筒井。潅木の枝を押しのけて道を作りながら、小桜の池まで1時間の道のりを歩き通す。
小さなコルにテントをぎりぎり張れる程度の場所があった。小さい水溜りがある。池はこの付近なのであろう。長谷川と古川に先を偵察してきてもらう。しばらくして2人が戻ってくると、上のほうにもう少し大きな水溜りがあるとのこと。その先にもっと大きな池があるのかもしれないが、ここでも何とか水を補給できそうなので、狭いながらテントを張る。
食当は古川と横塚、小松と田中が天気図を書く。酒井と筒井で水を汲みに行くと、それはまさしく池ではなく水溜りとしか呼べないものだった。泥水をプラティパスに汲むのは初めてだ。なんとなくベトナム戦争の戦地というイメージだ。この黒い水を濾過器「スーパーデリオス」で漉す。この小さく繊細な濾過器に、このような黒い水を漉させることがあまりにも酷であることは明らかだ。だがともあれ、今晩の水を確保することはできた。テントの中で貴重な水をよく味わって飲む。

 

カモシカ岩、岩場が続く。踏み跡はしっかりついている。

 

灌木の枝が顔にあたって痛い・・・。水を汲んだ水たまり。
よくこんなの飲んだなぁ・・・。

 


 

 10/29
6:05出発―8:30一の峰―10:20二の峰―11:30藤七の池―15:55門内小屋着

 

 4:30起床、6:05出発。今日は門内岳まで残りの行程を突破する。今合宿で一番の勝負になる日だ。天気は曇で悪くない。歩き始めて10分あまり、目の前の光景に愕然とした。池だ。神秘的な美しい池が豊富に水を湛えている。さらに歩み進むと、第2第3の池も現れる。池のほとりは幕営に適した快適そうな草地になっている。昨晩傾いたテントの中で重なり合って眠った努力はまったくの無意味だったわけだ。だが、もしこの先何らかの事情で引き返すことになっても容易に水を補給できるという安心感を得た。田中はすべての池で水を飲んだ。オレンジの雨具を纏って水を飲む姿は野生のライオンのようだ。

 

きれいなコザクラの池。「水だぁっ。」ライオンリチャ。

 

一の峰に向かう。まだヤブは濃くない。かわいい庭みたいな雰囲気。
なぜか幸せ度が上昇↑

 

 一の峰の直下は小さな窪地になっており水が流れている。草の斜面に座って休憩。田中はここでも水を飲んでいた。この先、踏み跡が完全に途絶える。一の峰へはかなりの急斜面で、背の高い熊笹と潅木が鬱蒼と覆っている。かなり厳しい藪漕ぎになることを覚悟し、右のほうの細い尾根から取り付く。潅木がわさわさと生えた細い尾根の形は、遠くから見ると背骨の飛び出したハイエナの背中に似ている。身体をくねらせて枝をかわしながらぐいぐいと押し進み、着実に高度を上げる。途中からは踏み跡が再び現れ、1時間余りで山頂に立った。門内岳までのすべての行程が見える。近いようでまだ遠い。

 

獣のようによじ登る。
高まるアドレナリン!
だぁー!
一の峰山頂。向こうに見えるのは二の峰。

 

 一の峰と二の峰との間の尾根は細くガレている。踏み跡のない藪だがあまり濃くはない。筒井いわく、左の大崩沢は過去に大きく崩壊した痕なのだそうだ。大崩沢に滑落したら助かる見込みはなさそうだ。最大の緊張感を持って進まなければならない。右の恵比須沢から吹き上げる風にひやっとしながらも無事に通過する。二の峰の登りも潅木の藪だが、あまりひどくはない。10:20、高くそびえる塔のような二の峰山頂に立った。
二の峰のから下りは最大90度くらいありそうな急傾斜。鎖が設置してあり、ひとりずつ降りる。大したこともないような鎖場だが、みな降りるのに時間がかかる。藤七の池は大きく、「透明な」水が豊富にある綺麗な池だ。ここでポリタンとプラティパスを満タンにする。

 

左の大崩沢。高度感で足がすくむ。滑落しないように・・・。

 

二の峰山頂から。
藤七の池や門内岳までの道が見える。
藤七の池で水を汲む。大きくてきれいな池だ。

 

 藤七の池より先は猛烈な笹薮だ。2メートルを超す笹が隙間もなく鬱蒼と茂っている。前方がまったく見えず、先頭集団を見失いそうだ。こんなときはしっかり声を出して意思疎通をとることが大事である。長谷川、筒井、古川。3人の人間ブルドーザーたちが交代で先頭に立ち、的確にルートを取りながら藪を押し分ける。隊の先頭で道を切り拓くというのはなんとも言えない快感だ。二の峰の下りと、もっとも藪の濃い区間を抜けるのに要した時間は3時間半ほどである。
14:00頃から雲行きが怪しくなってくる。右の沢に沿ってガスが昇ってきた。門内岳に向けて高度を上げるにつれ藪も薄くなるかと思いきや、相変わらず腰より上の薮漕ぎが続く。門内岳はなかなか近づいてこない。小松は相当藪にやられているらしくペースが遅れる。仕方なくラスト前に来させ、錬成合宿ばりの怒号を飛ばしながら気合で歩かせる。道を切り拓く3人にも疲労が見えてきた。酒井はトップを交替し、隊員に気合を入れ直して突き進む。まもなくして霧の中から門内岳山頂の小さい祠が浮かび上がった。ついに胎内尾根突破という目標を成し遂げたのだ。歓喜し抱き合う隊員たち。それぞれの目には光るものが。稜線は立っているのが大変なほどの強風が吹く。15:57門内小屋に滑り込んだ。

 

欝蒼とした熊笹のヤブ。最大で2メートルを超える。二の峰を振り返る。よくここまで歩いたものだ。
この区間、猛烈なヤブである。

 

門内岳到着。感激に男泣き。


 

 すぐに食当と天気図にとりかかる。雨が小屋の窓を叩き始める。間一髪であった。食事を済ませ、ティーパーティーで今日の振り返りと明日の予定を話した後、酒井と長谷川は僅かながらの差し入れの酒を取り出す。アルコールは全部でこれしかないのだが、どうしても胎内尾根の踏破を祝福したかったのだ。後のことはなんとかなる。「いきあたりばったり」がリーダーのモットーである。新人たちのここまでの感想を聞く。みなそれぞれ達成の満足感を味わい、精神的にもレベルアップできたようだ。「山で泣いたのは初めてです」、と横塚。リーダーとしても嬉しい限りだ。
そして20:00頃、心地よい疲れを感じながら、深い眠りについた。

 

 

Waseda Wander Vogel

Waseda Wander Vogel

早稲田大学ワンダーフォーゲル部の公式HPです。

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